研究概要 |
本研究は、ホストーゲスト相互作用を利用してナノサイズ磁石(単分子磁石)の磁気的性質の変化を目指すものである。これまでに単分子磁石の包接体合成研究を行ってきたが、その中で粘土鉱物層間の陽イオン交換によるインターカレーションが単分子磁石包接に有効であることを見出してきた。そこで平成22年度は、ゲストとして比較的小さい単分子磁石クラスター(Mn_2,Mn_4核クラスター)を、ホストとしてはMontmorilloniteを用いて、粘土鉱物層間へのインターカレーションを行った。粉末X線回折データは層間距離に対応するピークが低角側へシフトし、層間距離がゲスト分子のサイズに相当することが明らかとなった。これは粘土鉱物の層間が広がり単分子磁石がインターカレーションしたことを示唆している。この粘土鉱物-単分子磁石複合体について磁化率測定を行ったところ、インターカレーション前の単分子磁石とは全く異なる磁性が観測された。直流磁化率解析の結果から、単分子磁石分子内の磁気的相互作用が変化していることが示唆された。また交流磁化率は、元の単分子磁石で特徴的であった遅い磁化緩和を示さないことが明らかとなった。これらの結果から、Montmorilloniteの層間では単分子磁石の分子構造に歪みが生じ、磁気特性が変化したと考えられる。インターカレーション前後でUVスペクトルに大きな変化がなく、粘土鉱物層間距離も分子サイズに匹敵することから、単分子磁石の分解はないと考えられる。粘土鉱物層間では単分子磁石のクラスター構造を歪ませる分子ストレスが大きく、そのため磁性を大きく変化させ得ることを見出した。
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