研究概要 |
ガラス表面へ金ナノ粒子間にタンパク質を固定化した複合体の作製、及びATPase活性を有するタンパク質についての構造変化をプラズモンカップリングによる時間分解測定により検討を行った. 金ナノ粒子は粒子径55nmおよび20nmのものを調製した. ガラス基板表面は3-アミノプロピルトリメトキシシランにより修飾し, 粒子径55.2nmのナノ粒子分散液を滴下し固定化を行った.固定化したナノ粒子表面へは11-メルカプトウンデカン酸(MUA)および11-メルカプトウンデカノール(MUOH)の自己組織化単分子膜(SAM)を形成させた後, アミンカップリングを利用し, タンパク質をSAM末端へ結合させた. 粒径20nmのナノ粒子はあらかじめMUASAMにより被覆したもの(MUA@Au)を調製し, 上記のタンパク質へさらにアミド結合させた. これらの操作により, ナノ粒子-タンパク質-ナノ粒子からなる複合構造が構築される. 複合体生成の条件設定にはウシ血清アルブミン(BSA)を, 構造変化観察の検討にHSP70/HSP90 Organizing Protein(HOP)を使用した. まず, 光散乱が十分に観測可能かつ粒子の表面密度を抑えた状態となるよう, ガラス基板へ固定化する金ナノ粒子濃度の検討を行い, 最適なナノ粒子濃度を確認した.また, 固定化した粒子表面へのSAM形成において, MUA濃度を1mMとして実験を行った際, 粒子の凝集に起因するスペクトルの歪みが見られた. そこでMUOHを添加し表面へ結合するMUAの割合を減少させたところ, SAM形成時の粒子の凝集が抑制された.さらに, BSAを用いてガラス表面のナノ粒子とMUA@Auによりタンパク質を挟み込んだ状態で1対1のナノ粒子複合体が形成できる条件を確立した. 上記反応条件の設定後, HOPを用いてナノ粒子複合体を形成させ, ATP加水分解に伴うHOPの構造変化周期の観測について検討した. プラズモンカップリングにより観測された構造変化の周期はおよそ0.5秒未満であることが判断されたが, 現在この反応についてさらに詳細に検討を行っている.
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