近年、磁性マイクロ粒子は生体分析分野などで、アッセイの高感度化、簡便化に有効なツールとして用いられている。例えば米国のW.R.Heinemanらの研究チームは、磁性マイクロ粒子を流動性担体として使用することにより、簡便、高感度なサンドイッチ型ELISAを開発し、タンパク質やウイルスなどの電気化学的アッセイを達成している。 本研究では、酵素免疫定量法(ELISA)などの従来法よりも、簡便・迅速で、利便性の高い新しい細菌性毒素タンパク質の電気化学的スクリーニング試験の開発を目的とする。 磁性粒子(直径1μm)にアミド結合を介して電極活性物質(PQQ)を修飾させ、更にビオチン、或いはラクトースを結合させた機能性磁性粒子を調整した。磁石を包埋させた回転ディスク電極を用い、機能性磁性粒子の電極応答を測定した結果、磁石を包埋させていない電極と比較して約5倍の電流応答が得られた。これは、機能性磁性粒子が回転電極表面に磁気濃縮されたためである。機能性磁性粒子の応答をアビジンと反応させた後に測定したところ、試料溶液中のアビジン濃度の増加に伴い応答の減少が得られた。この現象は、機能性磁性粒子表面のPQQ分子がビオチンと共にアビジンによって被覆されることに起因すると考えられる。更に、ラクトースを修飾した機能性磁性粒子を用いて、コレラ毒素とγ-グロブリンによる応答変化を測定した結果、コレラ毒素結合時に選択的な応答の減少が得られた。本研究では、一連の検出過程において試薬の添加を一切必要としない、迅速かつ簡便なタンパク質アッセイの開発に成功し、代表的な細菌性毒素タンパク質であるコレラ毒素アッセイへの応用にも成功した。
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