研究概要 |
近年、生命科学・環境科学における分析手法として、Lab-on-a-chip、μ-TASに代表されるような比表面積が大きい微小空間を用いる分離・精製・抽出・反応は重要な技術の一つとなっており、より比表面積の大きい液滴を用いるマイクロリアクタの研究も広く行われている。このような液滴を用いたマイクロリアクタにおける反応制御および液滴の捕捉や移送するマニピュレーションやパターニングが可能な外場を利用する泳動法は有効な技術である。本研究では、磁場と電流を外場として用いる電磁泳動を利用する、新規なマイクロリアクタにおける反応制御および検出法の開発の基礎検討として、有機液滴および、近年、高導電性などその特異的な物性から注目を浴びているイオン液体液滴の電磁泳動挙動を観測し、その泳動速度から泳動支配因子の解明を行った。 1対のNd-Fe-B磁石を1mmの間隔で設置し作製した1Tの磁場中で、アニオンが同一なイオン液体である1,3-ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(daimTFSI:0.0026 S cm^<-1>)N-メチル-N-ブチルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルポニル)イミド(mbpTFSI:0.0026 S cm^<-1>)およびN-メチル-N-プロピルピロリジウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(mmpTFSI:0.0039 S cm^<-1>)を0.5 M KC1溶液中に7μmの直径の液滴として分散させ、電磁泳動速度を測定した。その泳動速度から求められたイオン液体液滴の見かけの電導度はdaimTFSIで0.016 S cm^<-1>、mbpTFSIで0.015 Scm^<-1>mmpTFSIで0.025Scm^<-1>と電導度が等しいdaimTFSIとmbpTFSIでは同程度となり、電気伝導度の大きいmmpTFSIでは大きくなった。この結果から、固体粒子では内部に電流は流れず、その電導度は表面電導現象によるものであったのに対して、イオン液体では内部の電導度が泳動に関与していることが示めされた。このことより液滴の内包成分が泳動速度への影響を持つことが示唆され、本手法は液滴を用いたマイクロ反応系における液液界面吸着分子および内包成分の新規な検出法として期待できる。
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