研究概要 |
伝播型SPRは入射光の偏光方向によって異なる応答を示す.この特徴は代表研究者が開発してきた吸収応答SPRにおいても受け継がれている.本研究課題の目的は,吸収応答SPRの偏光特性を活かし,界面選択性を有する分光法反射分光法の一つとして確立することである.事実,この方法は高感度反射分光法(RAS)の内部反射版と言うことができる.具体的な研究指針は大きく分けて(1)吸収応答SPRスペクトルの面内,面外成分への分離,(2)吸収応答SPRの波長域拡張と共鳴・非共鳴条件の最適化の2点である.まず(1)に関して,延伸ポリエチレン膜をサンプルとして吸収応答SPRの偏光応答特性について調べた.延伸ポリエチレン膜ではエチレン鎖がSPRプローブの金薄膜基板と平行となる.一方で過去に行ったアラキン酸カドミウム塩のLB膜ではアルキル差は金薄膜基板に垂直である.これらの結果の比較から,吸収応答SPR測定は面外モードの吸収バンドを選択的にとらえる分光法であることを実験的に明らかにした.また,同時に不明だった4420cm^<-1>の結合音バンドがwaggingモードに対応することが確かめられた.このことは情報量の豊富な結合音帯域の利用には役立つ成果と言える.また,(2)について,本年度は赤外分光器の標準試料室内部に設置できる角度可変SPRアクセサリーを新たに自作した.一方でファイバー接続型の紫外可視分光器導入により,可視領域での吸収応答SPR測定を行う準備を整えた.
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