研究概要 |
本研究において申請者は,内因性代謝物の中でも特にアミノ酸,ペプチド類,カテコールアミン類等といった生理活性アミン類,および有機酸に焦点を当て,『F-trap蛍光誘導体化法』という新手法に基づいたこれら化合物群の超高感度網羅的分析法を確立した。また,本法を統計学的手法と組み合わせることで,各種疾患患者の臨床診断法,薬物治療効果判定法へと応用展開することを目的とした研究を実施した。 本年度は前年合成したF-trap型アミン分析用試薬F-trap pyreneの高性能化に成功した。また,オンライン固相抽出法を組み合わせることで,アミン類の高感度かつ網羅的な分析法を確立することができた。 さらに有機酸に対する試薬ピークの検出されない蛍光誘導体化-HPLC分析法として,Fluorous Scavenging Derivatization (FSD)法を新たに開発し,同じく新規作製したマイクロF-SPEスピンカラムと組み合わせたTCAサイクル有機酸代謝物の高感度・網羅的分析法を確立した。さらに,F-trap法による薬物治療効果判定法確立のため,ヒト大腸癌細胞(Colo201)およびヒト神経芽細胞(SH-SY5Y)を培養した栄養培地中アミノ酸の代謝解析を実施した。このとき得られたアミノ酸濃度の経時的変化データに主成分分析を施すことで,Colo201を用いた解析では抗癌剤(5-フルオロウラシル,塩酸イリノテカン,シスプラチン)投与後の経過時間及び抗癌剤の作用機序の違いなどを,SH-SY5Yを用いた解析ではレチノイド誘導体を投与したときの神経細胞分化がアミノ酸代謝パターンに与える影響をそれぞれ2次元グラフ(Score plot)の座標位置の違いとして反映させることができた。
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