研究概要 |
本年度は「官能性アセチレンまたはオレフィン-鉄錯体」を用いる直接的アルキル化による環化反応の検討をおこない,以下の2点の結果が得られ当初の目的を達成した.1) THF中FeCl_2と3,3-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキシニルp-トルエンスルホネート共存下,-78度でt-BuMgClを作用させ-20度まで昇温した後,塩酸でクエンチするとN,N-ジエチル-2-[3,3-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]シクロペンチリデン]アセトアミド(Z/E=60:40)を得ることができた.また重塩酸でクエンチするとビニル位水素が重水素化されたこと,反応途中(-40度)で重塩酸処理すると,(Z)-3,3-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-5,6-ジデゥテリオ-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキセニルp-トルエンスルホネートが得られたことより,反応中間体として「アセチレンアミド-鉄錯体」が形成され,続いて分子内アルキル化反応が進行し,対応する環化体が得られたと考えられる.2) 上記1)と同様に,THF中FeCl_2と(E)-3,3-ジメチル-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキセニルp-トルエンスルホネート共存下,-78度でPhMgBrを作用させ-20度まで昇温した後,塩酸でクエンチするとN,N-ジエチル-1-(3,3-ジメチルシクロペンチル)アセトアミドを得ることができた.上述のアセチレンアミドのケースと同様に,クエンチの際および反応途中(-40度)で重塩酸により処理をすると,ジエチルアミド基のα位水素が重水素化されたこと,(5RS,6RS)-5,6-ジデゥテリオ-3,3-ジメチル-6-(N,N-ジエチルカルバモイル)-5-ヘキシルp-トルエンスルホネートが得られたことより,反応中間体として「オレフィンアミド-鉄錯体」が形成され,続いて分子内アルキル化反応が進行し,対応するシクロペンタン誘導体が得られたと考えられる.
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