研究概要 |
光学活性化合物の効率的合成法の確立は、21世紀のライフサイエンスを向上させる点から最重要課題である。しかしながら,現況の不斉合成技術において高効率的といえる技術は限られている。そこで,前年度の研究において不斉触媒または反応試薬にこれまでに申請者が開発してきたへテロアリールスルホニル基を組み込むことによる多機能性不斉有機分子触媒,多機能性試薬の開発をおこなった。当該年度においては、開発した不斉有機分子触媒の適用範囲の拡大を目指し、これまでに全く報告例がなったイサチン類へのアセトアルデヒドのアルドール反応を検討した所、高収率・高エナンチオ選択的に反応が進行することが明らかとなった。また、この反応を利用して、ヒト急性骨髄性白血病細胞HL-60に作用するコンボルタマイジンBおよびEの高エナンチオ選択的合成にも成功した。また、触媒の有効利用、環境調和型合成を目指すために、開発した有機分子触媒の固相担持による回収再利用を検討したところ、担持担体としてモンモリロナイトを用いた場合に、高効率で回収再利用が可能であることも明らかとした。通常、ケトン同士のアルドール反応では、触媒の有効性を示す指標TONは最大でも20であったが、本触媒系ではおよそTON=100まで達成可能となった。すなわち、研究実施計画にあった汎用性の拡大・触媒量の低減・生理活性物質合成には、一定レベルの成果が上げられたといえる。また、反応機構を分子軌道計算等で詳細に検討することによって、分子内のへテロアリール基が高次の水素結合ネットワーク構築に重要な役割を果たしているとこが明らかとなった。
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