研究概要 |
テトラゾリウムメソイオンは、窒素4原子と炭素1原子から構成される複素5員環化合物で、負電荷を環外原子に押しだすことで芳香族性を獲得し、環内には正電荷、環外原子に負電荷を有する分極によって分子内塩となっている。低級アルキル鎖を直接窒素上に有するテトラゾリウムメソイオンが室温で液体となり, また容易に減圧蒸留できることを見いだした。このなかで1-ブチル-3-メチルテトラゾリウム-5-オレートを取り上げ, 諸性質を詳細に検討した。汎用されるイオン液体と比較して本メソイオン液体の室温付近の粘度はきわめて低い(35 mPa/s)ことを明らかにした。また, エーテルよりも水, 水よりも塩化メチレンへと分配される性質を有しており, 反応溶媒として利用した際に水層から生成物をエーテル抽出し, ついで塩化メチレンによるメソイオン液体を抽出することで分離回収再利用が容易であることがわかった。溶媒としての極性を誘電率とソルバトクロミズム色素を用いた測定によって評価したところ, 既存のイオン液体と同等もしくはそれ以上の極性溶媒であることがわかった。環外原子が酸素である上記オレート以外に, チオレートやアルキルアミドを合成し, これらもまた室温で液体となることを見いだした。新しいタイプのイオン液体として大量に供給するために, 1-ブチル-3-メチルテトラゾリウム-5-オレートの合成・精製方法を改良し, 高純度で入手できる方法についても明らかにした。
|