研究概要 |
近年大環状分子によるゲスト分子(例えばフラーレンやカーボンナノチューブなど)の包接によるゲスト分子の物性変化と機能化を目的とした研究が盛んに行われている。本研究では、歪んだパイ共役骨格を持つ大環状分子の高効率な合成法の開発とその物性評価および機能化を目標としている。まず本研究で用いる9, 10-ジアルコキシ-9, 10-ジエチニル-9, 10-ジヒドロアントラセン類を合成し、これを用いる大環状化合物の合成を検討した。用いる反応としてパラジウム、銅触媒によるカップリング反応を選択し、一段階での合成を目指した。p-ジヨードベンゼン類を用いた場合、p-ジヨードベンゼン由来のベンゼン環とジヒドロアントラセン部位を3:3で含む大環状化合物が8%収率で得られた。また、p-ジヨードベンゼンの代わりに2, 6-ジヨードピリジンを用いて反応を行った場合、2, 6-ジヨードピリジン由来のピリジン環とジヒドロアントラセン部位を2:2、3:3、4:4で含む化合物を各々1%、5%、2%収率で得た。ピリジン環を含む大環状化合物のうち3:3で環形成した化合物は塩化スズとの反応において、温和にジアルコキシ部分が脱離し、ジヒドロアントラセンからアントラセン骨格へと変換されることがわかった。この変換後の化合物は高い歪みを持つ化合物であり、その物性とホスト分子としての挙動に興味が持たれる。平成21年度では、これら物性評価およびホスト分子としての挙動に加え、その他の歪みを持つパイ共役系大環状分子のライブラリー創製とナノリング、ナノチューブ創製を目指す。なお、上記成果についてはすでに学会発表を行っており、平成21年度中に論文発表を行う予定である。
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