研究概要 |
本課題の二本柱は"電気化学的な錯体合成法の確立"と"有機金属錯体生成プロセスを組み込んだ分子変換反応の開発"である。最終年度となる平成22年度は新たな有機金属錯体の合成法として、ニッケル錯体の合成法を検討すると共に、既に合成法を確立したカチオン性パラジウム錯体及びカチオン性ニッケル錯体を用いた反応開発を中心に研究を行った。 申請者は既にpincer型のカチオン性ニッケル錯体の化学的及び電気化学的調製法を開発し、得られたカチオン性pincer型ニッケル錯体がMichael付加反応及びaza-Michael反応に極めて高い触媒活性を示すことを見出している(Tetrahedron Lett.2008,49,7287-7289)。今回、不斉導入したカチオン性ニッケル錯体を含む新規カチオン性ニッケル錯体を合成し、aza-Michael付加に応用したところ、高い触媒活性を示し、また低eeではあるものの光学活性な生成物が得られた。現在、投稿論文を準備中である。 カチオン性パラジウム錯体生成プロセスを用いた有機電解反応として、銀を陽極に用いた末端アルキンとアリールボロン酸とのクロスカップリング反応を開発した。本反応は非常に高い反応性と広い基質適用範囲を有し、電子求引性基・電子供与性基いずれを有するアリールポロン酸、アルキンの組み合わせでも講習室で目的物を与えることが分かった。酸化的クロスカップリング反応においてしばしば問題となるアルキン同士、アリールボロン酸同士のホモカップリング反応はほとんど進行せず、目的とするクロスカップリング体のみが得られた。本研究成果はイギリス化学会の速報誌にて報告した(Chem.Commun.2010,46,9256-9258)。 また、新たなカチオン性パラジウム錯体生成プロセスを組み込んだ反応としてアルキンの酸化的ホモカップリングの開発に成功した。本系はまだ基質一般性に問題があるので、更なる反応条件の最適化を要するが、反応基質によっては高収率で目的とするジインを与える。現在更なる条件検討を行って基質一般性の拡張を試みている。
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