研究課題
本研究では、近年の均一系触媒の開発において2つの大きな潮流となっている有機分子触媒と金属触媒を分子設計レベルで融合させ、高機能・多機能な触媒作用を発現する複合機能触媒を開発する。今年度は、(1)キラル二核Znビスアミジナート触媒、(2)カチオン性キラルZn(II)-ビスアミジン触媒、及び関連研究として(3)キラルリン酸触媒による不斉合成反応に関する理論的検討を行った。(1)については、(R,R)-シクロヘキサンジアミンを母骨格として配位子末端に9-Anthryl基を導入したキラルビスアミジン配位子存在下(10mol%)、ベンゾイルギ酸メチルにEt_2Znを作用させると、付加反応が優先的かつエナンチオ選択的に進行することを見出した。特にシクロヘキシル基のような嵩高い脂肪族置換基を有する反応基質を用いると、高収率かつ高エナンチオ選択的に対応する生成物が得られた(up to 86% ee)。また量論反応やヨウ素滴定などの検討によって、反応活性種はビスアミジン配位子:亜鉛:反応基質が1:3:1であることがわかった。さらにDFT計算によって、エナンチオ選択性発現の要因について解明した。(2)については、キラルビスアミジン配位子、ZnCl_2、AgSbF_6から調製したカチオン性Zn(II)-ビスアミジン錯体を10mol%用いて、ベンゾイルギ酸メチルの不斉向山アルドール反応について検討したところ、(R)-DABN骨格を導入したビスアミジン配位子を用いたときに、アルドール生成物がエナンチオ選択的に得られることを見出した(up to 60% ee)。(3)については、(R)-BINOLから調製されるキラルリン酸ジエステルによるイミンの不斉ヒドロホスホニル化反応、不斉ロビンソン型環化反応における速度論的光学分割について理論的検討を行い、協奏的活性化機構やBINOL部位の3,3'-位置換基効果を解明した。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)
Angewandte.Chemistry Int.Ed. 48
ページ: 9652-9654
Tetrahedron 65
ページ: 4950-4956
The Journal of Organic Chemistry 74
ページ: 3266-3271