イオン液体という特殊な媒体の中でπ共役高分子は溶解しない。そこで本研究ではπ共役高分子(ポリチオフェン、ポリフルオレン)の側鎖にイオン液体に可溶なポリエチレンオキシド(PEO)を導入することで、π共役高分子のイオン液体への可溶化を図った。PEOはイオン液体のみならず水や多くの有機溶媒に可溶であるため、種々の媒体中におけるπ共役高分子の光学的特性に関する系統的な検討を行った。 研究初年度である平成20年度は主にPEOグラフト型ポリチオフェン、ポリフルオレンの合成を行った。モノマー単位にそれぞれPEOをアニオン重合法によって修飾し、ニッケルゼロ価錯体を用いた脱ハロゲン化重縮合にて目的の高分子を得た。側鎖に当たるPEOの分子量が大きいほど、主鎖の重合度が低かったことから、PEOの立体障害が酸化的付加を妨げているものと考えられる。主鎖の重合度を維持するために側鎖長を短くしたモノマーを用いた結果、ポリチオフェンでは20量体以上、ポリフルオレンでは10量体以上の目的高分子が得られた。 合成したポリチオフェンは水、各種有機溶媒、多くのイオン液体に可溶であった。それぞれの溶媒中において、吸収・蛍光波長は大きく変化し、ソルバトクロミズム・ソルバトルミネッセンスが観測された。特に水中で吸収・蛍光共に長波長側で観測されたが、動的光散乱測定より凝集体の存在が明らかとなり、固体状態の光学的性質が反映されているためであると結論付けた。有機溶媒、イオン液体中では溶媒のドナー性に依存することが分かり、溶媒の性質がπ共役系に影響を与えていることが明らかとなった。
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