前年度に見出した「電場配向可能なカラムナー液晶性コラニュレン」が、強誘電性を示すはじめてのディスコティック液晶材料となる可能性を検討した。電場配向を施したコラニュレン液晶について、その誘電緩和挙動や非線形光学特性の評価を行い、自発的な分極の有無および印可電場の反転による分極方向の反転の可能性を探った。印可電場に対する分極の応答は確認されたものの、それがコラニュレン環のラリッピングに由来することの証明までは至らなかった。 次に、液晶性コラニュレン間の水系結合による安定化を期待し、このコラニュレンで被覆された金ナノパーティクルの作製を行ったところ、水素結合能のない類似ハイブリッドとほぼ同様のサイズを持つ複合体の構築が可能であった。両者の熱的安定性について比較検討したところ、レファレンスがトルエン中50℃においては3時間で凝集を引き起こすのに対し、液晶性コラニュレンで被覆した金ナノパーティクルは同条件下一日たっても凝集せず、期待した安定性の向上が実現されていることを示した。得られた複合体の非線形光学特性をサイズのほぼ等しく、ドデカンチオールで被覆した金ナノパーティクルと比較したところ、コラニュレンで被覆した金ナノパーティクルはドデカンチオールで被覆したものと比べSHG強度が8倍に増大することが分かった。この結果は、コラニュレンのパイ系が金ナノパーティクルの電子状態に影響を与えている可能性を示唆している。
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