研究課題
マイクロSQUID磁束計はマイクロ~ナノメーターサイズの微小磁性体1個の磁性を測定するのに適した高感度な装置である。1990年代よりフランスのW.Wernsdorferにより初めて低温超伝導体製マイクロSQUID磁束計が開発され、20kOeまでの磁場下、6K以下の温度領域において、スピン感度10^4μ_Bでの測定を可能にした。最近、我々は高温超伝導体製マイクロSQUID磁束計を開発し、8kOeまでの磁場下、4.2-70Kの温度領域において、スピン感度10_8μ_Bでの測定に成功した。以上のようにマイクロSQUIDは市販の磁気測定装置に比べてはるかに高感度であるが、検出磁束量が試料とデバイスの形状・相対配置に大きく依存するために、かつて磁化の絶対量が評価されたことはない。磁化の絶対量は磁気相転移を議論する上で重要な情報である。本研究では既知の強磁性体微小結晶1個を用いたマイクロSQUIDによる磁束測定と、ダイポール近似計算との組み合わせにより、マイクロSQUID磁束計による磁化の絶対量決定に初めて成功した。まず、T_C=11Kの強磁性体であるプルシアンブルー類似体RbMn[Fe(CN)_6]のマイクロ結晶(3.5×4.0×3.0μm^3)からSQUIDに入る磁束量の外部磁場依存性を測定した。次に、試料とSQUIDの大きさと相対配置を計測し、メッシュ分割した試料の面積要素が持つ磁化と同じくメッシュ分割したSQUID検出面の面積要素に作るダイポール磁場との関係を計算した。上記のダイポール近似計算を実測値にフィットして試料磁化を求めたところ、1300Oeで1.67μ_Bであった。同じRbMn[Fe(CN)_6]の多結晶試料の市販のSQUID磁化率測定装置MPMSを用いて測定した1300Oeにおける磁化が1.66μ_Bであったことから、非常に高確度で磁化の絶対量が導出できたと言える。
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