研究概要 |
昨年度から引き続き,RNAと界面活性剤から形成される複合体の形態制御を目的とし,種々の検討を行った。 第一に界面活性剤がRNAと結合することで2分子膜の形成を目指し,アミノ酸を骨格としたカチオン界面活性剤の合成を検討した。その検討のために,アシル化アミノ酸型界面活性剤とリン脂質二分子膜との結合作用について調査を行い,成果をまとめた。次にアミノ酸型界面活性剤から,アシル過グリシンとアシル化グルタミンを選び,DMT-MMを利用した縮合法を新たに導入したところ,初年度では成果を挙げることができなかった,これらのアミノ酸型界面活性剤を骨格としたカチオン界面活性剤の合成に成功した。 第二には,水素結合による高次の会合体形成が期待される,アミンオキシド系界面活性剤を用いて,tRNAならびにDNAとの複合体形成挙動を系統的に検討した。アミンオキシド系界面活性剤はpHに応答して,カチオンから非イオンへと変化する。そこでpHの変化の観点から会合体形成を検討したところ,酸性側からアミンオキシドのpKa(ca.4.4)までは,初年度に検討した四級アンモニウムカチオン界面活性剤と同様に,臨界濃度において会合体を形成することがわかった。しかしながらそのpKaよりも高いpH領域では界面活性剤濃度を上昇させても会合体を形成することはなかった。一方臨界会合濃度よりも十分界面活性剤濃度が高い場合,四級アンモニウムカチオン界面活性剤系は会合体の再分散が観測されたが,今回のアミンオキシド系界面活性剤ではそのような再分散は確認できなかった。CDスペクトルの測定から,再分散ではなく会合体の形態転移がおきていることが示唆されたので,電子顕微鏡にてその形状を観察した。しかしながら,期待されるようなベシクルやチューブといった構造を確認することはできなかった。 今年度は以下の項目の検討と,結果の総括および論文ならびに国際学会での発表を予定している。 1. 上述した新規カチオン界面活性剤を利用した核酸との複合体形成を検討する。 2. 核酸塩基と相補的な水素結合対の形成が可能な塩基を骨格とした新規カチオン界面活性剤を新たに合成し,同様に核酸との複合体形成を検討する。
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