外部環境に応答する光誘起電子・エネルギー移動を利用して金属ナノ粒子表面上での光増感機能を制御するシステムの構築を目指して、まずは効率的な光増感物質の探索を行った。光増感機能として、生体系に多大な影響を与える活性酸素種の一種である一重項酸素の発生について検討した。ここでは、光機能性色素骨格としてピレンやポルフィリンを選択し、糖質と可逆的な共有結合や水素結合等の相互作用が可能なボロン酸修飾ピレン誘導体やピリジン縮環型ポルフィリン誘導体を設計・合成した。これら光増感物質の一重項酸素発生の量子収率を求めた結果、ピレン誘導体とポルフィリン誘導体での値はそれぞれ約0.9及び0.5となり、ピレン骨格を有する光増感物質が高効率な一重項酸素発生能を示すことを実証した。 また、機能性金属ナノ粒子の合成では、これまでに報告例が多い金ナノ粒子に焦点を絞った。様々な糖質を保護層に有する金ナノ粒子の合成は、それぞれの糖質自体を還元剤及び保護剤として用いることで成功した。これらの金ナノ粒子を精製後、各種コロイド分散液として調製した。この際、糖質の金ナノ粒子への導入率や粒子径及び形状は、高速液体クロマトグラフィー分析や電子顕微鏡観察によって評価した。さらに光化学的知見を得るために、それぞれの金ナノ粒子コロイド分散液の吸収スペクトルを調査したところ、540nm付近に極大吸収波長を持った吸収帯が確認できた。次いで、得られた金ナノ粒子コロイド分散液の分子認識能を検討した。一定条件下において、各コロイド分散液に生体関連物質であるタンパク質を添加した際、スペクトル変化を伴う溶液の変色がタンパク質選択性と共に観測できた。この変化には金属ナノ粒子の凝集性が関わっていることが示唆された。これらの機能性金ナノ粒子の基礎的知見を基に、今後は光増感物質の導入及び光化学的挙動を調査し、光増感機能制御システムの構築を行う。
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