本研究課題「双安定性金属錯体を用いた環境応答型インターフェイスの創製」は、ボトムアップ的手法を最大限に利用し、二次元表面上を舞台とした新しい物性及び機能の発現を目的としている。特に配位結合の結合柔軟性、自己組織化能を利用し、常温、常圧で多様な環境に応答する自己組織化インターフェイスの創出を目指している。平成20年度における研究では、これまで一般的であった金属、半導体といった2次元基版を用いるのではなく、その配位結合が表面上にむき出しになっていると考えられる金属錯体結晶を基板に用いるという新しいアプローチを試みた。特に金属錯体の中でも多孔性配位高分子と呼ばれる配位結合により形成される3次元骨格は結晶性の化合物であり、周期的に配位結合を有しておりその結晶表面を用いることで表面上に配位結合が格子状にむき出しになっている新しい基板として用いることができる。本研究ではそのむき出しになった配位結合上にさらなる3次元格子をくむことに成功した。ここでは、基板として用いた結晶表面構造に対して非常に近い格子を持つ別の3次元骨格をさらに成長させるという戦略のもと、エピタキシャル成長と呼ばれる合成法により二つの3次元格子を直接複合化できることを見いだした。放射光を用いたX線回折測定の結果、二つの結晶界面間では0.1Aという非常にわずかな格子間隔の違いを緩和するため、上に成長した3次元骨格は結晶基板の3次元骨格に対して、約12度ずれて成長することを明らかにした。特にこのような分子性結晶を基板として用いる研究はこれまでに例がなく、配位結合の結合柔軟性が引き出した大きな成果であるといえる。次年度はこの知見を生かし、環境応答性機能を付与するため、酸化還元活性な3次元骨格を電極基板上に直接成長させることを試みる。さらにその電位依存的な構造変化、及び反応活性を調べていく予定である。
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