研究概要 |
(1) イオン性-中性転移を示す液体の開発 様々な共役酸pK_a'値を持つ複素環塩基(3-ブチルピリジン、1-ブチルイミダゾール、1-ブチルピロリジン)と様々なpK_a、値を持つカルボン酸誘導体を用いて、計15種類の新規イオン液体を合成した。100℃以下での交流伝導度測定では、イオン性-中性転移によると思われる挙動は観測されていない。現在、赤外吸収スペクトルを用いたプロトン移動度の算出方法について検討しているが、pK_a-pK_a'値(プロトン移動度と相関)とWalden積(イオン性と相関)の間に定性的ながら良い相関が見られた。 (2) 原子価異性現象を示す液体の開発 コバルトビス(ジオキソレン)錯体に4, 4'-ジカルボン酸-2, 2'-ビピリジンを配位させて-2価陰イオンとし、テトラアルキルホスホニウム陽イオンとの塩を合成した。この塩は深緑色粘性液体で、-11℃にガラス転移を示す。室温の紫外-可視吸収スペクトルを測定し、MLCT, LMCT, LLCT由来の吸収バンドを確認した。磁化率測定から、χT値が2Kから熱活性的に増加し、室温付近で急激に変化することを見出した。本物質は、外場(温度)に応答して磁性が顕著に変化する(Curie-Weiss則に従わない)"スマートイオン液体"であり、現在、この磁気挙動が原子価異性に由来するものであるか確かめるために紫外-可視吸収スペクトルの温度変化を測定準備中である。
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