研究概要 |
(1)イオン性-中性転移を示す液体の開発 DBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)と1-プロパノールの中性混合溶液にCO_2ガスを通気すると、プロトン化DBUとプロピルカーボネートから成るイオン液体に変化する。本研究では、この中性混合溶液にウマ心筋シトクロムc、ヘマタイト(α-Fe_2O_3)、マグネタイト(Fe_3O_4)を添加し、CO_2ガス通気による溶解性の変化について知見を得た。 (2)原子価異性現象を示す液体の開発 前年度合成したコバルトビス(ジオキソレン)錯陰イオンを含むイオン液体(ガラス転移点-11℃)の紫外・可視吸収スペクトルの温度依存性を評価した。低温ではDBCat(3,5-di-tert-buty1-1, 2-catecholate)から中心Coへの電荷移動(LMCT)に帰属されるバンドが610nm付近に現れるが、7℃から47℃に温度を上げるとこのLMCTバンドは弱くなり、代わりに中心CoからDBSQ(3,5-di-tert-buty1-1, 2-semiquinonate)への電荷移動(MLCT)バンドが740nm付近に現れる。また、2400nm付近のDBCatからDBSQへの配位子-配位子間電荷移動(LLCT)バンドは温度上昇とともに弱くなる。これらのスペクトル変化は原子価異性平衡がこの温度領域で起きていることを示唆しており、前年度報告した静磁化率測定の結果を支持している。 また、イオン伝導度の温度依存性を評価した。室温イオン伝導度は1.0×10^<-6>Scm^<-1>と低く、100℃までアレニウス的挙動を示した。原子価異性平衡温度(30-40℃)付近で異常が見られないことから、原子価異性挙動はイオン拡散に影響しないことが分かった。
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