本年度はフルオレン類を導入したビスポルフィリンの合成と評価を行った。フルオレン類としてカルバゾール(X=N)をポルフィリン間に導入した。カルバゾールのジヨード体を既知法により合成し、エチニルポルフィリンとソノガシラ反応させて合成した。合成した化合物の二光子吸収断面積をトルエン中およびピリジン中においてOpen-aperture Z scan法(5ns)を用いて測定したところ、760nm付近において約30000GMという大きな値が得られた。フルオレン(X=C)の場合と比較して、ポルフィリン間の距離・角度の違い、電子密度の増加による一光子吸収スペクトルのシフト変化と二光子吸収特性への影響を受けており、ポルフィリン間の相互作用が大きく影響したためと考えられる。また、電子ドナーとしてテトラチアフルバレン(TTF)をポルフィリン間に導入した二量体を合成した。既知法によりTTFのジヨード体を合成し、エチニルポルフィリンとソノガシラ反応させて合成した。合成した化合物の酸化還元挙動は両色素の特色を反映したものであった。二光子吸収断面積をトルエン中およびベンゾニトリル中においてOpen-aperture Z scan法(5ns)を用いて測定したところ、トルエン中、760nm付近において約6000GM、ベンゾニトリル中、760nm付近において約7000GMいう値が得られた。電子ドナー性が強くてもポルフィリン間の相互作用がそれほど大きくなかったためカルバゾールと比べて大きな値が得られなかったと思われる。以上、当初の計画通り新規二光子吸収色素の開発に成功し、設計指針を明らかにした。
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