フェナントロリンを導入したビスポルフィリンの合成と錯化および機能評価を行った。フェナントロリンのジブロモ体を既知法を参考に合成した。これとエチニルポルフィリンとをソノガシラ反応によって合成した。合成した化合物の二光子吸収断面積をナノ秒レーザーとフェムト秒レーザーで測定した。合成した化合物の二光子吸収断面積をOpen-aperture Z scan法(5 ns)を用いて測定したところ、780nm付近において約20000GMという大きな値が得られた。亜鉛イオンを混合し錯化させたところ吸収スペクトルの長波長シフトが観測され二光子吸収断面積も約40000GMと大きな値となった。亜鉛が無い場合と比較して、ポルフィリン間の距離・角度の違い、電子密度の増加による一光子吸収スペクトルのシフト変化と二光子吸収特性への影響を受けており、ポルフィリン間の相互作用が大きく影響したためと考えられる。また、電子アクセプターとしてナフトジイミドをポルフィリン間に導入した二量体を合成した。既知法によりナフトジイミドのジブロモ体を合成し、エチニルポルフィリンとソノガシラ反応させて合成した。二光子吸収断面積をOpen-aperture Z scan法(120 fs)を用いて測定したところ、910nm付近において約4700GMという値が得られた。電子アクセプター性が強くてもポルフィリン間の相互作用がそれほど大きくなかったため大きな値が得られなかったと思われる。以上、当初の計画通り新規二光子吸収色素の開発に成功し、設計指針を明らかにした。
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