研究概要 |
前年度までに得られた知見を元に、メカノクロミック分子である2,4,5-トリフェニルイミダゾール(ロフィン)骨格を有し、1次元あるいは2次元的な集積構造の形成が期待される分子の開発と評価に重点を置いて研究を行った。 まず、ロフィン誘導型低分子ゲル化剤の分子設計に関する知見を得るため、ロフィン骨格に導入する自己組織化駆動部位の数を変化させたロフィン誘導体およびその二量体を合成した。得られた化合物について、ゲル形成能を調べたところ、自己組織化駆動部位が1ないし2個の化合物はゲル形成能に乏しく、この骨格では少なくとも3つの自己組織化駆動部位が必要であることがわかった。また、二量体構造の化合物はいずれもクロミズムを示したが、クロミズムに伴うゾルーゲル転移などの集合構造制御には現在のところ至っていない。今後、濃度や溶媒、自己組織化駆動部位の構造等の条件を変えて再検討する予定である。一方、イソフタルアルデヒドから合成され、分子内にロフィン骨格を2個有する化合物について詳細な検討を行った。クロミズムを示す二量体構造の化合物については、現在精製方法を検討中であるが、単量体構造の化合物の自己組織性の評価を行ったところ、芳香族溶媒や四塩化炭素だけでなく、アセトン、酢酸エチル、エタノールなども低濃度でゲル化し、今年度Chemistry Letter誌に報告した3置換ロフィン誘導体よりも良好なゲル形成能を示すことを明らかにした。また、電子顕微鏡観察により、この化合物が、ゲル化した溶媒中で繊維状分子集合体のネットワーク構造を形成していることを確認した。 以上の結果は、ロフィン誘導型自己組織化材料の動的構造制御を目指す上で、有益な分子設計指針を与えるものと考えている。
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