研究概要 |
前年度までに得られた知見を元に、一次元・二次元分子集合体を形成することが期待されるロフィン誘導体の開発を行った。今年度は特に、自己組織化駆動部位の置換位置の効果の検討に重点を置いて研究を進めた。 具体的には、4,4'-ジヒドロキシベンジル誘導体と3-ヒドロキシベンズアルデヒド誘導体を用いてロフィン誘導型低分子ゲル化剤を新たに合成した。得られた化合物のゲル形成能を調べたところ、ヘキサンや四塩化炭素、芳香族溶媒に対して低濃度の添加でゲルを形成した。そのゲル形成能は、これまでに当研究室で開発したロフィン誘導型ゲル化剤の中で最も優れており、例えばトルエンに対しては約0.3wt%程度の添加でゲルを形成することが可能であった。非対称な分子構造が結晶性の低下を誘起し、ゲル形成能の向上に結びついたと考えている。 一方、このロフィン誘導体の二量体のクロミズム現象について調べたところ、乳鉢で擦る程度の比較的小さな応力でメカノクロミズムを示すことを明らかにした。また、このメカノクロミック二量体は溶液とすることでフォトクロミズムを示すこともわかった。これまでに当研究室で開発した対称型ロフィン誘導体の二量体では、メカノクロミズムの発現には回転式高圧ずれ応力装置を使用し、少なくとも数百Mpaの大きさの応力が必要であったが、自己組織化駆動部位の置換位置を変えることで応力に対する応答性を大幅に変化させることができたといえる。 クロミズムに伴うゾル-ゲル転移などの集合構造制御は現在も検討を続けているが、今年度の成果では、低分子ゲル化剤を中心としたロフィン誘導型自己組織化材料の動的構造制御を目指す上で、有益な分子設計指針を得ることができたと考えている。
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