研究概要 |
本研究の目的は, ・酸化亜鉛共存下でポリ塩化ビニル(PVC)を比較的低温度にて熱処理することにより, PVCに含まれる塩素が酸化亜鉛によって定量的に引き抜かれるメカニズムについて検討すること, および得られる残留固体を触媒や吸着剤などとして応用する方法を提案するものである。本年度は特に, 残留固体の構造を分光学的手法により解析することによって, 脱塩素反応のメカニズムを考察すること, および残留固体の固体酸への転換について中心に検討した。PVCを一旦有機溶媒で溶かして酸化亜鉛粒子表面にコーティングした後, 加熱すると, 160℃では2時間, 200℃では0.5時間でほぼ完全に脱塩素化することがわかった。また, 発生ガスは水のみであり, 有害な塩化水素や油状成分は実質的に発生せず, 塩素は含塩素亜鉛化合物として回収された。得られた残留固体のFT-IR, 固体^<13>C-NMR分析から, PVCは脱塩素反応によって3個の炭素とσ結合した炭素が重合した構造を多量に含む構造に変化することがわかった。このことから, PVCの脱塩素化は, 酸化亜鉛がPVCから塩素を直接引き抜き, 主鎖間の架橋反応が進行した結果であると考察した。つぎに, 残留固体を濃硫酸と反応させることによりスルホン化を行った。100℃でスルホン化した場合, H^+とNa^+との交換量から求めた酸量は1gあたり約2ミリ当量であり, 市販の強酸性イオン交換樹脂とほぼ同等の値を示した。また, このスルホン化は残留固体の特異な構造を反映して低温で進行することが特徴であり, 例えば加熱せずともスルホン化されることもわかった。
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