研究概要 |
本研究課題は、太陽光による水の完全分解反応における水素発生の対反応である水の4電子酸化反応を高活性で触媒する二核ルテニウム錯 体触媒系の開発を目的とする。既に、研究代表者は二核錯体[Ru_2(OH)_2(3, 6-t-Bu_2sq)_2(btpyan)](SbF_6)_2(1、3, 6-t-Bu_2sq=3, 6-di-tert-butyl-L, 2-benzoquinone, btpyan=1, 8-bis(terpyridyl)anthracene)が水の四電子酸化反応を触媒することを明らかにしているが、この二核錯体をITO電極あるいは光触媒であるTiO_2表面に化学修飾することにより、著しい触媒能の向上と光化学的な水の完全分解反応を実現する事が期待される。まず二核化配位子btpyanにリン酸基を導入したbtpyan-CH_2PO_3Etの合成を行った。出発物質である1, 8-dichloroanthraceneにFriedel-Craftsアシル化反応によりメチル基を導入した後リン酸エステル化した。この化合物のクロライドをホウ酸化した後、ターピリジンと宮浦-鈴木クロスカップリング反応を行う事で、高収率でbtpyan-CH_2PO_3Etを合成した。錯体1の合成と同様の手法を用いて[Ru_2(OH)_2(3, 6-t-Bu_2sq)_2(btpyan-CH_2PO_3Et)](SbF_6)_2(2)を合成する事に成功した。錯体2の均一溶液中での酸化還元挙動は錯体1とほぼ同様であり、酸素発生反応を触媒することが分かった。現在、錯体2のリン酸エステルを温和な条件下で脱保護することを検討している。また、錯体1のヒドロキソ配位子を同位体ラベルした[Ru_2(^<18>OH)_2(3, 6-t-Bu_2sq)_2(btpyan)](SbF_6)_2(^<18>O-1)の合成にも成功した。共鳴ラマン分光法を用いて^<16>O-1と^<18>O-1を比較することによりRu-OHの振動バンドを帰属する事が出来た。次年度は、酸化状態にある錯体1の共鳴ラマンスペクトルを測定する事により、二分子の水から酸素-酸素結合が形成される過程を明らかにする予定である。
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