本申請者は、これまでにデノボ設計されたコイルドコイル蛋白質モチーフをベースに、リガンド依存的に大きく構造転移を起こすコイルドコイル蛋白質の設計に成功している。また、そのようなリガンド依存的なデノボ設計蛋白質をモジュールとして用いて天然蛋白質配列中に組み込む事により、加水分解酵素、蛍光蛋白質等のシングルドメイン蛋白質の機能活性を、リガンド依存的に機能スイッチすることに成功している。本研究申請では、これまでの概念を蛋白質一蛋白質問相互作用調節へ拡張することを目標としている。 本年度は具体的に、蛋白質-蛋白質相互作用のモデル系としてRNA合成酵素(T7 RNAP)とその阻害剤蛋白質(T7 lysozyme)の相互作用ペアを用い、T7 lysozyme側に、特定のペプチド依存的に大きく構造転移を起こすコイルドコイルモジュールを導入する事により、これらの間の蛋白質問相互作用のOffからOnへのスイッチに成功した。リガンドペプチド不在下において構造形成できないコイルドコイルモジュールの導入のために、T7 lysozyme部位は構造不安定化を受けて、いったん結合活性を失っているものの、ここヘリガンドペプチドを添加した際には、コイルドコイルモジュールの構造形成と共にT7 lysozyme部位への構造不安定化が解消され、結合活性が復活できたものと考えられる。本実験で検証した手法は、原理的には多くの天然蛋白質に対しても応用可能な手法と思われる。また一方で、特定の基質に応答し構造転移を起こすコイルドコイルモチーフのバリエーションを増やすために、設計4本鎖コイルドコイル蛋白質への有機分子の結合サイトの設計や、イオン選択制の向上した金属イオン応答コイルドコイル蛋白質の設計等にも取り組んだ。
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