分子生物学の研究の進展に伴って、DNA中シトシン塩基のメチル化変異が注目を集めている。このDNAのメチル化は、遺伝子発現のオン・オフを制御し、疾患と密接に関わることから、遺伝子中のメチル化シトシンを検出することは、臨床的に、また分子生物学的に重要である。 今年度は、まず、従来までに確立した光酸化反応を用いたメチルシトシン部選択的なDNA切断反応の詳細な検討と切断効率の向上に取り組んだ。光増感剤ナフトキノンを導入したDNAを合成し、各種pHにおける光反応を検討した。その結果、弱酸性条件下で光照射を行なうと非常に効率よく、DNA上メチルシトシン部での酸化反応が進行し、効果的な切断に結びつくことを見出した。また、がん抑制遺伝子p53の部分配列を用いてシステムを検証したところ、従来の方法よりもメチル化シトシン部での切断効率が向上することがわかった。 次に、本光反応の反応メカニズムの詳細を調べた。分光学的手法による反応解析を行なったところ、pH4.5以下の酸性条件ではメチルシトシン塩基はプロトン化され、酸化されにくくなることがわかった。一方、反応生成物の解析を行なったところ、H5.0-8.0の範囲では、反応中間体のプロトン化・脱プロトン化が最終生成物の形成に大きな影響を与え、pH5付近で最も効率よく反応が進行することが分かった。
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