本研究全体における最も大きな研究プロジェクト(目的)は、"「生体内における緻密で巧みな触媒・制御機構」を動的X線結晶構造解析の技法を用いて、電子密度で確認(可視化)すること"である。具体的には、「1)酵素蛋白質結晶中で実際に触媒反応を進行させる、2)その進行過程をX線回折データとして収集する、3)結晶構造解析から得られた活性中心の精密な差フーリエ電子密度図を用いて、基質分子ならびに酵素活性中心に存在するアミノ酸側鎖の反応進行中での動き(働き)を原子レベルで追跡する」ことを計画しており、まず本年度は本研究を遂行させる上で必要となる、「長時間X線を照射することで起こる蛋白質へのダメージ」と「高輝度X線照射による蛋白質内部金属結合部位の還元」について調べるために、X線回折系にのせる光照射装置を購入設置し、実際に金属結合部位の還元反応が起きていることをその結晶の分光学的測定から確かめた。標的蛋白質結晶としては"銅含有亜硝酸還元酵素"の結晶を用い、それに基質である亜硝酸イオンをソークしたものをX線回折実験に使用した。連続で360度X線を照射した結晶の吸収スペクトルから、最初の数十分間のうちに急速に銅部位の還元が起きていることが明らかとなり、昨年度得られていた回折データからの構造解析結果と一致することが確認できた。現在、これら結果を論文にまとめている最中である。
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