研究課題
本研究全体における最も大きな研究プロジェクト(目的)は、"「生体内における緻密で巧みな触媒・制御機構」を動的X線結晶構造解析の技法を用いて、電子密度で確認(可視化)すること"である。具体的には、1酵素蛋白質結晶中で実際に触媒反応を進行させる、2その進行過程をX線回折データとして収集する、3結晶構造解析から得られた活性中心の精密な差フーリエ電子密度図を用いて、基質分子ならびに酵素活性中心に存在するアミノ酸側鎖の反応進行中での動き(働き)を原子レベルで追跡する」ことを計画しており、昨年度は本研究を遂行させる上で必要となる、「長時間X線を照射することで起こる蛋白質へのダメージ」と「高輝度X線照射による蛋白質内部金属結合部位の還元」について調べるために予備的実験を行い、その結果、金属原子結合部位に明確な位置のずれを確認でき、X線照射によって銅原子のII価からI価への還元反応が起こり、基質分子も還元された生成物になったことを示唆させる結果だった。そこで、本年度は、昨年度得られた結果をさらに裏付けるために、顕微分光測定装置を立ち上げ、蛋白質結晶そのものの吸収スペクトルを測定する事で金属結合部位の還元を確かめることを計画した。その結果、電子密度から予想された通り、X線照射を開始してから比較的早い段階で、すでに還元がおきていることがわかった。現在、これら結果を論文にまとめている段階である。
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Bioelectrochemistry
巻: 77 ページ: 82-88
酵素工学ニュース(酵素工学研究会誌)
巻: 63 ページ: 29-34