● 申請者が新規開発した有機化学-酵素化学的手法を応用し、以下の1~6の手順に従って実験し、ペプチドのN末端特異的にPETプローブを導入することに前年度成功している。1. D.Tirrellらにより報告されている、非天然アミノ酸を認識してtRNAの3'末端に結合する変異アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)を大腸菌を用いて作製した。2. フッ素原子の入ったPETプローブ(非放射)型アミノ酸を有機合成した。3. 2の非放射型アミノ酸を用い、1にて作製した変異ARSの存在下にて、アミノ酸-tRNA結合体(アミノアシルtRNA)を作製した。4. N末端にリジンを持つモデルペプチドを大腸菌を用いて作製した。5. 3にて作製したアミノアシルtRNAと特別な酵素(L/F-転移酵素)と、4にて作製したペプチドとを混合し、蛋白質を非放射型アミノ酸で標識してTOF-MSおよびEdman分解法で同定した。6. 変異ARSによるアミノアシル化反応(上記1)とL/F-転移酵素による非天然アミノ酸の目的ペプチドへの転移反応(上記5)を1つの試験管内で行った。この場合、tRNAはリサイクルされ触媒として働くため、標識反応の効率化および反応スケールが大幅に向上した。本年度は以上の内容の追試実験を行い、特にPETプローブ標識の速度論的解析を行った(論文準備中)。また、上記6については速報にて論文発表を行った。● 蛍光修飾については、前年度までにほぼ完成しており、本年度は変異L/F転移酵素がなぜ新規蛍光性アミノ酸を認識できるのか、計算機を用いて転移酵素とアミノ酸とのドッキングモデルを作ることで、理論的考察を行った。
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