本研究では、遺伝子シグナルを飛躍的に増幅できる化学反応プローブを創出し、生細胞内遺伝子検出法へ応用することを目的とする。化学反応プローブの遺伝子検出は、核酸鋳型上で配列依存的におこる化学反応を基にシグナルを作り出す。この化学反応が複数回起こることにより、シグナル増幅が可能となる。酵素を用いることなしにシグナル増幅できる反応機構のデザインは、化学分野におけるチャレンジングな課題であり、その概念は極めて重要で様々な分野に応用できる。そこで、本研究計画では、等温下シグナル増幅に焦点をしぼり、これまで達成されていない短時間で遺伝子の存在を蛍光シグナルとして増幅できる新規反応メカニズムを開発する。本年度は、蛍光発生分子となる化合物の合成をおこなった。ローダミン110のアミノ基をジニトロベンゼンスルホニル基で保護することにより、蛍光を消光させることに成功した。また、この分子はチオールなどの求核性分子が高濃度存在すると、ジニトロベンゼンスルホニル基が脱保護され再び蛍光を発することがわかった。そこで、この化合物を細胞内に導入したところ、GSHと選択的に反応し、蛍光を発生することが明らかになった。しかしながら、本化合物は反応性が高すぎるために、遺伝子検出プローブに導入する分子には向かなかった。次に、核酸鋳型上で選択的に蛍光発生する分子として、モノニトロベンゼンスルホニル基で保護したローダミン誘導体を合成した。この分子を核酸プローブに導入することにより、遺伝子検出プローブを合成する予定である。
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