研究概要 |
中心金属が一次元的に配列する構造を持つ金属-ジオンジオキシマート錯体は加圧により顕著に色を変化させるので、色から圧力を求める圧力インジケータ材料として期待されている。また、加圧により電気抵抗率を急減させる特性から高圧力センサとして利用できる可能性をもつ。石英、サファイア及びダイヤモンドなどの絶縁性透明基板上に薄膜を作成し、電気的・光学的性質の圧力依存性を研究し、最適な基板を決定して高圧力センサ材料を開発する事を目的とする。 今年度はPd-シクロヘキサンジオンジオキシマート錯体[Pd(niox)_2]を合成し高圧下において粉末X線回折及び電子スペクトルの研究を行った。Pd(niox)_2はK_2PdCl_4の飽和水溶液をシクロヘキサンジオンジオキシムの熱飽和エタノール溶液に加えて合成を行った。Pd(niox)_2錯体の薄膜は真空蒸着法を用いてダイヤモンドに蒸着し作成した。高圧下における粉末X線回折は高エネルギー加速器研究機構のPF BL18Cにおいて測定した。電子スペクトル測定は顕微測光装置を開発して行った。Pd(niox)_2の粉末X線回折実験より格子定数を見積ると、加圧によりb軸, c軸は単調に減少した。a軸は加圧すると減少するが0.5GPa付近から増加に転じて2.5GPa付近で極大値をとり、さらに加圧すると減少することを見出した。線圧縮率は軸毎に異なり異方的に圧縮される。Pd(niox)_2薄膜は450nm付近に中心金属の4d-5p遷移に基づく吸収帯を持つ。この吸収帯は加圧により長波長側に大きくシフトした。これは、c軸方向が大きく縮むことによりPd-Pd間距離が接近することに密接に関係している。加圧によりPd(niox)_2薄膜の色が黄色→赤→紫→青というように連続的に変化する。
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