研究概要 |
中心金属が一次元的に配列する構造を持つ金属-ジオンジオキシマート錯体は加圧により顕著に色を変化させるので、色から圧力を求める圧カインジケータ材料として期待されている。また、加圧により電気抵抗率を急減させる特性から高圧力センサとして利用できる可能性をもつ。石英、サファイア及びダイヤモンドなどの絶縁性透明基板上に薄膜を作成し、電気的・光学的性質の圧力依存性を研究し、最適な基板を決定して高圧力センサ材料を開発する事を目的とする。 金属-ジフェニルグリオキシマート錯体[M(dpg)_2]はこの種の錯体の中では比較的大きな分子構造を持ち、格子定数が大きいため強い圧力効果を発現させる。今年度はNi(dpg)_2とPd(dpg)_2の金属イオンを1:1で混合したNi/Pd錯体混晶薄膜を作成し、その物性と構造を詳細に研究した。高真空下で得られた薄膜を観察すると、Pd(dpg)_2薄膜の色は黄色、Ni(dpg)_2薄膜の色は赤色であった。Ni/Pd錯体混晶薄膜の色は中間色の橙色を示した。Ni/Pd錯体混晶薄膜の最も長波長側に現れる吸収帯はNi錯体とPd錯体のそれとの中間付近に現れることを見出した。高圧下吸収スペクトル測定から吸収帯の圧力依存性の傾きを見積もるとNi錯体、Pd錯体、Ni/Pd混晶薄膜の値はそれぞれ39nm/GPa,66m/GPa,45nm/GPaであり、Ni/Pd混晶薄膜ではNi, Pd錯体の中間の値を持つ。吸収帯の圧力依存性の傾きは色の変化と密接に関係しており、混晶薄膜を利用すると色の変化を制御できることが実証できた。 これまでは錯体によって使用できる圧力範囲が限定されていたが、混晶化によって圧力による色彩変化を制御できるため、使用範囲が飛躍的に広がることになる。Ni/Pd錯体混晶薄膜のNi(dpg)_2, Pd(dpg)_2の比率を調整すれば吸収帯の現れる波長や薄膜の色を自在にコントロールできるので、今後比を変えたNi/Pd錯体混晶薄膜についてさらに研究する必要がある。
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