1. 具体的成果 種々の比率で混合した炭酸バリウム、酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、炭酸ナトリウムを白金るつぼ中で1450度、4時間の条件で溶融後、融液をステンレス板上に流し出し、急冷することで得た酸化物ガラスに、600度がら1000度の温度条件下で所定時間熱処理を施すことで、強誘電結晶として知られるチタン酸バリウム(BaTiO_3)をガラス相から析出させることに成功した。熱処理条件(温度、時間)を調整することで、析出するBaTiO_3結晶子(粒界のない結晶構造を保っている領域)のサイズを約170nm以上の任意の値(上限は不明)にコントロールできることを確認した。ただし現段階において析出結晶粒のサイズが結晶子のサイズと一致するかは明らかではない。 同ガラスに添加したユーロピウムイオンの紫外励起光下における発光をBaTiO_3結晶析出前後で比較したところ、両試料とも赤色の発光を示したものの、色、強度に有意な差はなかった。これは3価の状態(ガラス相であるか結晶相であるか)を反映しないためであると考えられる。 2. 意義・重要性 周囲がBaTiO_3結晶を構成する他のイオンにより取り囲まれている結晶内部と比較して、一部ガラス相などの結晶相と異なる相を構成するイオンで取り囲まれる結晶粒表面では誘電率が非常に大きくなるとの数値解析結果が報告がある。本研究で開発されたBaTiO_3結晶化ガラスは、広範囲で析出結晶の(表面/体積)比をコントロールすることが可能であることから、表面物性の調査や、現有の誘電体材料を凌ぐ高誘電率をもつ材料の開発など、基礎、応用両面に渡って波及効果の大きな媒質であるといえる。
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