研究概要 |
本研究では色素増感太陽電池(DSC)において、従来レドックス対として用いられているヨウ素レドックス対I^-/I_3^-(酸化還元準位:+0.20Vvs.SCE以下同じ)を臭素レドックス対Br^-/Br_3^-(酸化還元準位:+0.85V)に変えることでの高電圧化を目指した検討を行った。この系で高電圧かっ高効率を達成するためには、臭素レドックス対よりもポジティブなHOMO準位を持ち、TiO_2のコンダクションバンドに電子を注入できるLUMO準位を有する新規な増感色素の開発が必須である。 平成20年度では、上記条件にマッチングしたRu錯体増感色素としてHOMO準位が+1.31Vである(dcbpy)_3Ru(dcbpy=4,4'-dicarboxy-2,2'-bipyridine)を見出し、TiO_2電極や電解液などの検討により、開放電圧1.03Vかつ光電変換効率2.5%のDSCを作製する事に成功した。平成21年8月にはこの内容について韓国で学会発表を行い、ポスター賞を受賞した。 平成21年度では、(dcbpy)_3Ruの1つのdcbpy配位子を各種置換基Rを有するビピリジン配位子R_2bpyと置換する事でそのHOMO-LUMO準位を変化させた錯体(dcbpy)_2(R_2bpy)Ruを合成し、臭素系電解液における高電圧化を検討した。4位にOHを導入した錯体では、光吸収的は長波長化したもののHOMO準位が+1.05Vと負にシフトしすぎてしまい、満足する電圧は得られなかった。しかしながら、4位にHを導入した(dcbpy)_2(bpy)Ruでは、HOMO準位は+1.24Vとなり、(dcbpy)_3Ruよりも優れた光電変換特性を示す事を見出した。この高効率化を検討した結果、開放電圧1.01Vかつ光電変換効率3.5%のDSCを作製する事に到り、昨年度よりも光電変換効率を1.4倍に向上させる事に成功した。
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