昨年度に開発した効率的オリゴエン合成法から得られる基質を用いて、興味深い7員環生成反応を見出すことができた。 ジルコノセン錯体を用いて、2種類のアルキンと塩化アリルの高選択的3成分カップリング反応から、1-ブロモヘプタトリエン誘導体を合成した。これに低温下でtert-ブチルリチウムを作用させると、リチウム-ハロゲン交換と引き続く環化反応が速やかに進行し、加水分解の後に対応するシクロヘプタジエンが高収率で得られた。通常、カルボリチオ化による環化反応では6員環が生成する反応がほとんどであるため、この結果は、オリゴエン骨格に由来する興味深い反応性であると推測された。この反応は、種々の置換基を有するヘプタトリエン誘導体で進行し、それぞれ対応する7員環生成物を良好な収率で与えた。また、加水分解の代わりにクロロトリメチルシラン、臭化ベンジルなどの求電子剤を加えると、対応する捕捉生成物が良好な収率で得られた。 この反応のメカニズムとして複数の機構が考えられたため、参照化合物を用いた反応から候補となる機構の妥当性を検証した。共役ジエン骨格を持たないヘプタジエン誘導体での反応では、7員環生成は観測されず、6員環生成物が低収率で得られるのみであった。また、ハロゲンを持たないヘプタトリエンを用いた場合には、超塩基の使用によって同様の7員環生成反応が進行した。以上の結果は、本反応がリチウム-ハロゲン交換の後に他の部位に転位し、そこから環化することで進行していることが明らかとなった。
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