研究概要 |
本年度は、新規なオキサゾール系蛍光性色素(1)を配位子として用いたRu錯体色素(2)を分子設計・合成し、それらを用いた色素増感太陽電池の機能評価を行った。まず、1,2-キノン系色素と2,2'-ビピリジン-4,4'-ジカルボキシアルデヒド、および酢酸アンモニウムを酢酸に溶解させて80℃で加熱することで、蛍光性色素(1)を得た。蛍光性色素(1)とRu(bpy)_2Cl_2をエタノールに溶解させて80℃で加熱することで、Ru錯体色素(2)を得た。DMF中の可視吸収スペクトル測定から、蛍光性色素(1)は425nmと351nmに吸収極大を示した。一方、Ru錯体色素(2)では、蛍光性色素(1)由来の吸収帯が428nmと353nm付近に出現し、MLCT遷移由来の吸収帯が550nm付近に出現した。蛍光性色素(1)およびRu錯体色素(2)を用いた色素増感太陽電池を作製し、入射単色光(λ)当たりの光電変換効率(IPCE)測定を行った。蛍光性色素(1)とRu錯体色素(2)の最大IPCE値は共に5~6%であった。AM1.5、照射光強度60mWcm^<-2>での電流-電圧(I-V)測定から、蛍光性色素(1)の短絡電流(J_<sc>)と光電変換効率(η)値は、Ru錯体色素(2)のものに比べて2倍程度の値を示した(蛍光性色素(1)J_<sc>=0.57mA cm^<-2>,η=0.2%:Ru錯体色素(2);J_<sc>=0.30mAcm^<-2>,η=0.1%)。開放電圧(V_<oc>)は同程度であった(0.37-0.39V)。Ru錯体色素(2)の低い光電変換効率の原因として、Ru錯体色素(2)からTiO_2電極へ効率よく電子が注入されていないことが考えられた。吸着基であるカルボキシル基をビピリジン配位子に導入すればMLCTを利用して電子の流れに方向性を与えることができ、変換効率の向上が期待できる。
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