研究概要 |
世界で初めて"結晶性"の耐熱性プラスチック光ファイバー候補物,ならびに"結晶性"光導波路候補物を創製した.結晶性高分子は結晶/非晶の混在状態であるために,その界面における屈折が著しく,光の透過が起こり難い.そのため,これまで結晶性高分子を用いた光伝送材料は存在しなかった.それ故にプラスチック光伝送材料は,皆等しく耐熱性を持ち得ず,高温での使用能に乏しかった.そこで本研究では,高結晶性のフッ素系共重合体を高温延伸を行い,透明のファイバー,ならびにフィルムを形成させて,始めての"結晶性"プラスチック光ファイバー,ならびに光導波路材としての提案を行った.得られたフッ素樹脂透明材料は共に,5倍の延伸倍率で最も透明性が高くなり,フッ素系ポリマーのラメラが"ニシンの骨状構造(ヘリング・ボーン配列)"を形成していた.また,サブ・ナノサイズにおける対象ポリマーの結晶構造は,従来報告されてきた六方晶系とは異なり,斜方晶系であることを見出した.物性値としては,既存のポリメチルメタクリレート製プラスチック光ファイバーと比べて,1kmあたり5倍の光伝送損失で有り,むしろ200m以内の適用距離であるのならば,既製品よりも高い光伝送値を示すことが明らかになった.この時の連続使用温度は280℃であり,既製品の105℃という値を大きく上回る結果となった.更に結晶性フィルムは500μm厚で,850nm波長の赤外光透過性が95%をこえ,旭硝子社の「サイトップ」を上回る値を得た.
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