本研究課題では、凝集構造を形成し、材料の骨格構造形成をする絹フィブロインと、ハイドロキシアパタイト(HAP)の各形成能を有し、材料の水溶性を付与することが期待される、BSPのキメラタンパク質材料を創製することで、新たな歯・骨再生材料を提案することを目的としている。目的の材料を創製するため、今年度は、Ca^<2+>結合性を付与した新規絹タンパクを設計、そのモデルペプチドを合成し、NMRによる構造評価から、この分子設計の確認を行った。モデルペプチドの一次構造は(AGSGAG)_4EEEEおよび(AGSGAG)_4EEEEEEEEの2種類を中心に検討を行った。 本モデルペプチドについて、ハイドロキシアパタイト吸着前後の詳細な構造を検討するため、固体NMR法による構造解析を行った。その結果、HAP添加後、Glu由来ピークのブロードニングが生じていることから、HAPとGluが特異的な相互作用を引き起こしている事を示唆している。この現象に加え、Ala残基における結晶化(β-sheet化)が著しく生じていることも明らかとなった。本結果は、機能性配列であるGlu領域とHAPの特異的な吸着が、分子構造全体を変化させている事を示しており、構造制御を行う上で、設計に関してさらなる検討が必要であると考えられるため、次年度では更に詳細な構造情報の取得を計画する。また、本ペプチドのカルシウムイオンとの相互作用を観測するため、溶液NMR法を用いた検討を行ったところ、Glu Cδピークの^<13>C化学シフトが著しい低磁場シフトを示した。固体NMR法による評価と総合して、合成したペプチドは本研究計画の目的を達成するための機能を有した設計がほぼ出来上がっていると判断した。来年度は、機能性と構造制御を自在に行う事のできる一次配列を決定し、タンパク質の生産へ発展させたいと考えている。
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