ポリロタキサン上のα-シクロデキストリン(CD)にさらにホストとしてのα-CDやゲスト分子を修飾して、動くホスト「環動ホスト」や動くゲスト分子「環動ゲスト」を有するポリロタキサンを合成した。そして、環動ホストポリロタキサン上の環状分子間を架橋した「環動ホストゲル」、ホストポリロタキサンとゲストポリロタキサンと混合し非共有結合架橋を有する「環動ホスト-ゲストゲル」等の新たなゲルを調製した。これらのゲル中における環動ホストの高分子鎖上のスライドというミクロな効果を、よりマクロな効果として観測することを目的として実験を行った。環動ホストポリロタキサン(αCD-PR)の種々のアゾベンゼン系色素との錯体形成における会合定数KをITCにより測定し、未修飾のα-CDやプルラン主鎖に直接α-CDを修飾したホスト修飾プルラン水溶液で得られた会合定数と比較した。その結果、αCD-PRは会合定数がα-CDの3倍以上増大した。これは二つの環動ホストによるゲスト1分子への共同的な包接がスライド効果によって容易に実現したため考えられる。次にスライド効果による環動ホストゲル中へのゲスト分子の取り込み挙動を観測した。ゲスト分子にビオロゲンポリマーを用いた際、高いゲル中への取り込みを示した。しかしモノマーゲストを用いた際にはほとんどゲル中への取り込みを示さなかった。これは環動ホストのスライド効果による協同的な包接による取り込み挙動によるものであると考えられる。
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