本研究は、高分子化学、界面化学を学術基盤とし、気液界面に吸着した高分子微粒子を利用する異方性(ヤヌス型)コロイド結晶材料の創出、および構造・物性評価を通じて、界面を利用する異方性、規則性を併せ持つ材料創出法に関する基本概念を構築することを目的としている。平成21年度は、平成20年度に準備したサブミクロンメートルサイズからミクロンメートルサイズの粒子径、単分散性の制御されたポリスチレン、ポリメタクリル酸メチルなどの極性の異なるモデル高分子微粒子を用いて気液界面に作成した2次元コロイド結晶の存在下、水媒体中で重合反応を行うことで、ヤヌス型コロイド結晶材料の創出を試みた。その結果、ピロール、アニリンの化学酸化重合を行った系において、水相に接していた面は導電性高分子で完全に覆われ、気相に接していた面では高分子微粒子が部分的に顔を出したヤヌス2次元コロイド結晶フィルムの合成に成功した。疎水性の高いポリスチレン粒子を用いて合成したコロイド結晶フィルムは、親水性の高いポリメタクリル酸メチルの場合と比べ気相に露出している粒子の表面積が大きいことを見出し、コロイド結晶作製に使用する粒子の表面極性をコントロールすることで、フィルムのモルフォロジィを制御できることを明らかとした。また、得られたコロイド結晶ヤヌスフィルムの走査型電子顕微鏡写真を解析することで、気液界面における粒子の接触角を算出することにも成功した。生成フィルムは双面で親疎水性が異なることも明らかとし、水相、気相に移動させるだけでフィルムの折りたたみが可能であることも見出した。
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