研究概要 |
位相揺らぎの少ない単光子びもつれ合い光子対源の実現を目指し,量子ナノ構造を形成する核スピンの無秩序性による光子源の量子性悪化を防止するため,単一量子ドット構造内の核スピンの制御に着手し,5Tにもおよぶ核磁場形成に成功した.また様々な量子ナノ構造を探索し,量子リング構造及び量子ナノワイヤー構造が有力な候補であることを偏光測定及び光子相関測定により実証した. [核スピン制御]半導体量子構造を用いた位相揺らぎのない光子源の実現には,量子構造を形成している多数の核スピンによるランダムな磁場を制御する必要がある.当該研究者は自己集合InAlAs量子ドット構造において円偏光照射により偏極した電子スピンを量子ドット構造へ注入し,超微細構造相互作用を介した核スピン制御に着手した.核スピン偏極により発生する磁場の大きさは5Tにも達し,その局所性及び双安定性といった特異性から量子情報処理への応用が期待されている.半導体量子構造内の核スピン制御技術は,位相揺らぎのない光子源の実現には必要不可欠なものであり,当該成果はその基盤技術を担うものである. [光子源のコヒーレンスの評価]半導体量子構造を用いた単光子源及びEPR光子対源の実現に向けて,最重要課題である異方性交換相互作用の抑制に関して,新規な量子構造の探索を行い,光子源としての光学的特性を評価した.具体的には形状異方性の低減が見込めるInAs/GaAs量子リング構造及びInPナノワイヤー上に形成されるInAsP量子ドット構造を用いて光子源としてのコヒーレンスを評価した.両量子構造において異方性交換分裂が観測されず,光子源の偏光状態等量子通信において光子の歩留まりに影響を与えるコヒーレンス時間は,単光子源として研究が進められている他の量子構造で観測されているものと遜色の無いものであった.これらの結果は量子リング構造が(単)光子(対)源として有力な候補であることを実証したものである.
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