本研究では、ゲルマニウム(Ge)の引き上げ(CZ)法単結晶成長における、ボイドをはじめとする成長時導入欠陥(grown-in欠陥)の形成挙動について結晶成長条件を変えて実験的に調べ、(a)欠陥種とその実態、(b)欠陥形成温度、(c)欠陥形成機構を明らかにすることである。平成20年度は以下の知見が得られた。 (1)「grown-in欠陥観察に必須である無転位CZ-Ge結晶成長を試み、原料準備方法および結晶成長条件の改善により、従来成長方法の1割程度の転位密度に低減することに成功した(一部の成果について特許準備中)。この方法を用いることにより、今後ボイドなどの欠陥形成温度や条件などを把握できる。 (2)「grown-in欠陥形成温度の把握のため、CZ-Ge結晶成長における固液界面の温度勾配を熱電対を使って直接測定し、本実験環境下では約10℃/cmであることがわかった。 (3)「高濃度p型Ge結晶を得るためにB添加Ge結晶成長を行い、Bの平衡偏析係数について従来報告値のk_0=17等よりもはるかに小さいk_0=6.2を得た。また、Ge融点近傍のBの固溶限が2〜4×10^<18>cm^<-3>であることを見いだした。これよりも高いキャリア濃度の結晶を得るには、BではなくGaを添加する必要があることがわかった。 (4)「高濃度n型Ge結晶を得るためにAs添加Ge結晶成長を行い、結晶中のAs濃度が1×10^<19>cm^<-3>を超えると結晶中にGeAsが{111}面に沿って板状に析出することがわかった。この析出物は成長時に形成される。組成的過冷却起因で結晶中にAs高濃度の液滴が取り込まれ、その中でAsの濃縮が起こり754℃でGeAsとして析出していることを明らかにした。その際に液滴下部のファセット成長、およびGeAsのGeに沿った液相エピタキシャル成長が起こっていることが示唆された。
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