本研究では、ゲルマニウム(Ge)の引き上げ(CZ)法単結晶成長における、ボイドをはじめとする成長時導入欠陥(grown-in欠陥)の形成挙動について結晶成長条件を変えて実験的に調べ、(a)欠陥種とその実態、(b)欠陥形成温度、(c)欠陥形成機構を明らかにすることである。平成21年度は以下の知見が得られた。 (1)grown-in欠陥観察に必須である無転位CZ-Ge結晶成長を試み、酸化ホウ素(B_2O_3)を少量添加して融液表面の一部を覆うことによって、転位発生源となる酸化ゲルマニウム(GeO_2)を捕捉、分解し、結果的に転位密度の低減および無転位のGe単結晶を得ることに成功した。(特許出願済み)。 (2)(1)の方法で成長した結晶中へのBの混入はSIMSの下限以下であり、酸素は数十ppm程度混入していることがわかった。また、この系にGaを添加したとき、GaはB_2O_3なしのときと同様の偏析現象を示し、Ga起因の析出物を形成することなく低転位密度のGe結晶が得られることを見いだした。 (3)(1)、(2)で得られた結晶を選択エッチングしたところ、直径数μmのボイドが観察された。ボイド密度やサイズ、分布等については、今後分析、評価する予定である。 (4)GeにGa、In、B、As、Snを高濃度で添加した結晶を成長し、組成的過冷却の発生条件について検討した。その結果、発生するときの各不純物濃度は、Hurleによって提唱されている組成的過冷却発生の理論式に従うことを見いだした。また、As添加の場合には板状のGeAsが{111}に沿って析出することがわかった。
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