研究概要 |
強磁性トンネル接合用電極としてCoPt垂直磁化膜上に極薄(<5nm)のCo_2MnSi電極を成膜し、その構造, 磁気特性及び表面平坦性を評価した。面内のX線回折法によって極薄のCo_2MnSiの構造解析を行った結果、Co_2MnSiが1nmと非常に薄い領域においてもB2構造以上の高い規則状態を維持していることを確認した。Co_2MnSiが高いスピン分極率を持つためにはB2以上の規則度が必要であることが理論的に予言されており、本結果は極薄のCo_2MnSiにおいてもハーフメタル性が得られる可能性を示す非常に重要な成果である。また高輝度放射光施設SPring-8において、X線磁気円二色性を測定することによってCo, Mnの元素選択ヒステリシスを観測し、Co_2MnSiの磁化過程を直接的に評価した。その結果, Co_2MnSiの膜厚が3nm以下の場合においては, CoPtの高い磁気異方性の影響から、Co_2MnSiの磁化が面直方向に向いていることを明瞭に確認した。さらに、原子間力顕微鏡による表面像観察の結果、これらの膜の平均表面ラフネスは0.3nm前後と極めて小さいことを確認し、トンネル接合の下部電極として十分な平坦性を有していることが分かった。また、これらを下部電極とし強磁性トンネル接合を作製した結果、暫定的な結果として、室温で9%のTMR比を得た。これはCoPt単体を用いた場合よりも大きなTMR比である。
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