研究概要 |
反強磁性体の磁化ダイナミクスは強磁性体よりも桁違いに高速であることが理論的に予測されている。しかし, 超高速に磁化を制御し観測する手段が確立しておらず, その報告例はわずかであり, 予測が実証されたとは言えない。本研究では, 申請者がこれまで予備的成果を上げてきた反強磁性体を試料として. 1. 円偏光による光誘起磁化や逆ファラデー効果を利用して反強磁性体の磁化を制御する手法を開発する。 2. それを基にポンプ-プローブ法を用いて反強磁性体の超高速磁化ダイナミクスを観測する。 3. さらに, 従来法のパルス磁場より高速の超短パルス光による世界最速磁化制御を試みる。 以上を実現して, 次世代メモリーMRAM等のスピントロニクスデバイスの高速化を目指す。 今年度は磁化ダイナミクス測定装置の導入、データ収集解析プログラムの開発、赤外超短パルス光の開発、低温測定装置の導入など測定装置開発を目的としていた。 これらはすべて早期に達成され、実際に反強磁性体NiOを用いたポンプ-プローブ測定を開始した。 円偏光励起により、予想通りのサブpsの超高速逆ファラデー効果を見出した。これは円偏光した光の角運動量が物質に移行し、NiOが超高速に磁化したものと考えられる。また、この逆ファラデー効果は3次非線形光学過程として記述されることを示した。 NiOは軌道角運動量が消失しているため、これと類似の物質を調べることで、逆ファラデー効果における軌道角運動量の役割について、研究を進める予定である。
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