研究課題
反強磁性体のスピン歳差運動の周波数は交換相互作用が働くため、THzオーダーに達し、強磁性のそれよりも桁違いに高い。これを利用することで超高速な磁気記録が実現される可能性がある。本研究では、反強磁性体において円偏光パルス照射による非熱的なスピン制御を目指している。今年度は試料として室温反強磁性体NiOを用い、77Kにて磁気光学ポンプ-プローブ測定を行った。ポンプ光とプローブ光が時間的に一致する瞬間に大きなファラデー回転があり、それに続いて約1.1THzと約140GHzの振動が観測された。これらはNiOの反強磁性共鳴周波数と一致するため、スピン歳差運動が誘起されたと考えられる。さらにこれらの歳差運動の位相は、円偏光パルスのへリシティによって反転したため、逆ファラデー効果、つまり円偏光パルスが試料内に有効磁場を作り出し、それがインパルス誘導ラマン散乱過程によってスピン歳差運動を誘起したとして解釈された。有効磁場と反強磁性体の相互作用はσモデルによってうまく記述され、磁場の時間微分が反強磁性ベクトルに作用したと考えられる。反強磁性体において観測された初めての例である。
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cond-mat. 80
ページ: 1003.0820v1
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