太陽電池の基本原理は、半導体で吸収されたフォトン1個に対して、1対の電子-正孔対が生成することにある。キャリアが禁制帯幅以上のエネルギーを持つ光によって励起されたとしても、過剰なエネルギーは熱としてすぐに失われる。そのため、上記の原理に基づくならば、シリコン太陽電池ではエネルギー変換効率の上限が30%程度となる。これに対して、ナノ粒子系では、吸収されたフォトン1個に対して、複数のエキシトンが生成されること(マルチエキシトン生成)が報告されている。この現象が固体中で観測できれば、これまでの太陽電池の原理を根本から書き換えることとなり、エネルギー変換効率の理論限界は40%以上となる。本研究では、マルチエキシトン生成による太陽電池の高効率化の可能性を実証することを目標としている。具体的には、SiもしくはGe量子ドット超格子を光吸収層に用いた量子ドット太陽電池を用いて、マルチエキシトン生成の実証を行う。平成20年度は、Ge量子ドット超格子の作製技術開発および作製した試料の構造評価を中心に行った。本研究ではアモルファスSiC(A層)とアモルファスSiCGe(B層)からなる積層膜を数10サイクル以上作製し、その後高温で熱処理をすることによりGe量子ドット超格子を作製する。GeドットはB層中に生成される。A層およびB層はVHFプラズマCVD法により作製した。Raman散乱分光法による評価の結果、700〜800℃での熱処理により、試料中にGeナノ結晶が生じることが明らかとなった。また、SiGeに起因するシグナルが検出されなかったことから、Geのみが結晶化していると考えられる。さらに、B層のGe濃度により結晶化の度合いを制御できることも明らかとなった。これらの結果は、Ge量子ドット超格子太陽電池を作製する上で重要な知見である。
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