シリコンもしくはゲルマニウム量子ドット超格子(Si-QDSL、Ge-QDSL)を光吸収層としたpin構造を用い、固体中におけるマルチエキシトン生成の検証を目指して研究を行った。この目的のためには、高品質なQDSLが必要であるため、まずはQDSLの作製に注力した。Si-QDSLの高品質化については、水素プラズマ処理が有効であることを明らかにし、処理温度を300℃以上とすることが重要であるという指針を得た。水素プラズマ処理後のSi-QDSLからはフォトルミネッセンスが確認されている。 Ge-QDSLの作製については、プラズマCVD法により作製したアモルファス超格子(a-SiCGe/a-SiC)を熱処理することで、Ge-QDSLの作製が可能であることを明らかにした。なお、原料ガスにはモノメチルシラン、モノメチルゲルマン、水素を用いた。熱処理が試料構造に与える影響を詳細に評価することにより、Geナノドットの形成には750℃程度の熱処理が必要であることを明らかにした。これはSi-QDSLの形成温度(~1000℃)よりもかなり低い温度であり、プロセス温度の低温化のために重要である。試料の光学的・電気的特性はGeナノドットの形成に伴い、急激に変化した。また、熱処理前のa-SiCGe層の厚さを変化させることにより、熱処理後に形成されるGeドットのサイズを制御可能であることを見出した。現在までに、4nm程度のGeドットを有するGe-QDSLの作製に成功している。高圧水蒸気処理により、Ge-QDSLの欠陥密度低減が可能であることが明らかとなった。ただし、フォトルミネッセンスは観測されておらず、更なる欠陥密度の低減が必要である。フォトルミネッセンスが確認されたSi-QDSLにおいて、pin構造を作製し量子効率を評価した結果、マルチエキシトン生成の検証にはより高品質なQDSL(欠陥密度10の16乗程度)が必要であることを示唆する結果が得られた。
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